データ・マネタイゼーション:オープンAPI 2.0への戦略示唆
本稿では、オープンAPIの本格的な活用によるビジネス革新を必要とする日本の金融機関に対して、データ・マネタイゼーション・テクノロジー(システム接続形態の現代化を中心としたデータ利用環境の改革による、データを起動としたビジネス革新の方法論)の動向を概観した。以下に、グローバル市場からのその知見を要約する。
データ・ハンドリング・テクノロジーの進化
先進的な企業は一元的なデータ環境へとシフトする過程で、データ取り込みから可視化データへの変換に至るライフサイクル全体をカバーする強力な情報管理ツールを活用している。そうした企業ユーザーの間では、川下分野でツール、アーキテクチャ、プロセスの有効な相互作用を促す動きが顕著化している。
具体的には、ローコードのデータラングリングツールを使って、ユーザーフレンドリーですぐに利用可能なアナリティクスを導入している。ダッシュボード、スコアカード、ネクストベストアクション、その他の望ましい形式でこれらのツールを導入すれば、フロント/ ミドル/ バックオフィスにおける意思決定を向上できる。今後は、予測モデルに基づく推奨や最適行動を強化する目的で導入するケースが増えるとみられる。
データ・アナリティクス・テクノロジーの進化
AIはこれらツールの「秘密の情報源」としてマシンラーニングアルゴリズムを活用して、IT部門だけでなく他の部門からも構造化/非構造化データ(テキスト、ニュース、チャット、ボイスなど)にアクセスしやすくするサポートをする。
最先端のベンダーは「市民データサイエンティスト」の実現をサポートし、アナリストやビジネスユーザーがリアルタイムでデータの操作/解釈を行い、それに基づいて行動できるように支援する。企業ユーザーへのエンゲージメント、DevOpsの普及、データアーキテクチャの再構築などが進むことにより、2020年は、デスクトップレベルにおけるAI元年となるだろう。
金融ビジネスへの含意
意思決定の巧拙は競争力により大きな影響を及ぼしている。データプラットフォームの出現と普及により、金融機関の大多数は他社に比肩するか、他社より優れた競争力を得ることができる。 データプラットフォームスポンサーにとっては絶好のビジネスチャンスである。AIおよびそれに関連する最先端の分析ツールの利用拡大やクラウドへのシフトを実現していない企業は、速やかにそれらを実現すべきである。金融機関にとって、データ利用環境の現代化は、優先的な経営課題である。
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