SMEバンキング ― アジア太平洋地域の事業機会
2020/03/16
Eiichiro Yanagawa
テクノロジーが加速するコーポレートバンキングの進化(その2)
コーポレートバンキングは進化のタイミングにある。テクノロジーの先駆者である大手金融機関だけでなく、デジタルの巨人やフィンテックとも効果的に競争するには、コーポレートバンキングは段階的かつ急速な進化を遂げる必要がある。プロダクト・セントリックなアプローチを止め、カストマー・セントリック、つまりワークフローを再考してカスタマージャーニーを改善するアプローチを採用する必要がある。ペーパーベースのプロセスをデジタル化し、直観的な意思決定からデータ分析を最優先に移行するために、顧客に対してより積極的な働きかけをする必要がある。
セレントは新レポート「テクノロジーが加速するコーポレートバンキングの進化:アジア太平洋地域の動向と邦銀への示唆」で、コーポレートバンキングが3つの側面で優れた成果を上げる方法について考察した。
- コーポレートバンキングの成長戦略
- 中小企業(SME)バンキング― アジア太平洋地域の事業機会
- 次世代コーポレートバンキングへのステップ
本稿は、4回シリーズでそのエッセンスを紹介する、第2回である。
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SMEバンキングを巡る5つの視点
アジア太平洋地域(APAC)の中小企業(Small and medium-sized enterprises、以下SMEと記述)は、長い間銀行から十分なサービスを受けておらず、費用がかかりすぎるかリスクが高いと見なされ、大手銀行と地域銀行の双方に存在する組織のサイロの間に挟まれてきた。一方で、SMEはアジア経済の大部分を占め、GDPと雇用の50%以上に貢献している。
そのためこの市場には、長らく金融サービスプロバイダーにとって大きく魅力的な事業機会が存在すると考えられてきたが、そこでのソリューションとサービスモデルを適切に設計するためにはSMEの進化するニーズを詳細に理解する必要がある。
本稿でセレントは、5つの視点からこの事業機会の動向を考察した。
- 商業活動の改善
- 資金調達
- キャッシュフローの改善
- 海外取引
- メインバンクの変更