コーポレートバンキングの成長戦略
テクノロジーが加速するコーポレートバンキングの進化(その1)
コーポレートバンキングは進化のタイミングにある。テクノロジーの先駆者である大手金融機関だけでなく、デジタルの巨人やフィンテックとも効果的に競争するには、コーポレートバンキングは段階的かつ急速な進化を遂げる必要がある。プロダクト・セントリックなアプローチを止め、カストマー・セントリック、つまりワークフローを再考してカスタマージャーニーを改善するアプローチを採用する必要がある。ペーパーベースのプロセスをデジタル化し、直観的な意思決定からデータ分析を最優先に移行するために、顧客に対してより積極的な働きかけをする必要がある。
セレントは新レポート「テクノロジーが加速するコーポレートバンキングの進化:アジア太平洋地域の動向と邦銀への示唆」で、コーポレートバンキングが3つの側面で優れた成果を上げる方法について考察した。
- コーポレートバンキングの成長戦略
- 中小企業(SME)バンキング― アジア太平洋地域の事業機会
- 次世代コーポレートバンキングへのステップ
本稿は、4回シリーズでそのエッセンスを紹介する、第1回である。
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プラットフォームでイノベーションと変革への障壁を克服する
企業の顧客は、技術的な予算が限られておりスタッフの数が限られていることから、新しいテクノロジーやサービスに関して先導的な役割を果たす銀行やテクノジプロバイダに依存し続けている。
しかし多くの銀行は、新興技術やフィンテックパートナーシップの推進にもかかわらず、インキュベーション段階からのその商用移行に苦労している。インキュベーションに5年も費やしては、何も起きない。
よくある落とし穴は、設計思考や機動的なアプローチを大規模に採用できないことだろう。その結果、新プロジェクトは従来の低速でサイロ化された開発モデルを継続的に使用して実装される。 UI / UXデザイナー、アジャイルリーダー、データサイエンティスト、そしてデータセキュリティ管理者が市場の高い需要を抱えているため、適切なスキルセットの調達が欠如していることも原因の一つだろう。
イノベーションを促進するためのアプローチの一つは、セレントが「プラットフォーム化」と呼んでいるものである。これは、「銀行のイノベーションにおけるプラットフォーム化の役割」(2018年7月)に詳細を解説している。
「プラットフォーム化は、複数の参加者(プロデューサとコンシューマ)が相互に接続し、対話し、作成し、そして価値を交換することを可能にする新しいエコシステムモデルとして定義出来る。たとえばベンダーは、サードパーティに開放されている一連の製品機能を提供でき、金融機関はそこから新しい商品・サービスを構築して、顧客に提供が可能である。」
その代表的な成功モデルは、Fidor Bankにみられる。(「セレント・モデルバンク2019:Fidor Bank (Germany):マーケットプレイス・バンキング」(2019年4月)を参照。)