次世代資金決済システムの胎動【日本語】
2021/07/18
Eiichiro Yanagawa
全銀システムと銀行間決済ネットワークの未来(日経FinTech Camp ウェビナーシリーズ)
Abstract
世界中の国や地域が、金融市場インフラ(FMI)の高度化への取り組みを加速している。全銀システムは、24h/ 7dリアルタイムペイメント対応の決済インフラ提供に止まらず、その付加価値サービスの提供や多様なサービスを提供するノンバンク(資金決済事業者)の接続を通じて、次世代資金決済システムへ、そして次世代金融サービスのイノベーション・アリーナに進展すべきだ。
日本においては世界に先駆けて、1973 年の「第 1 次全銀システム」稼働当初から、平日日中帯に限りリアルタイムペイメントを実現していたが、2018 年 10 月に「全銀モアタイムシステム」が稼働したことにより、24h/ 7d 対応のリアルタイムペイメントが実現した。諸外国においては、決済インフラを刷新することにより、リアルタイムペイメントと 24h/ 7d の対応が同時に進められており、2008年の英国を皮切りに2017 年後半には北米、欧州の主要国・地域において対応が完了した。
日本では個人向けサービスに対応しない一部の銀行等を除き、 ほとんどの預金取扱金融機関が 24h/ 7d リアルタイムペイメントを実現する全銀モアタイムシステムに参加している。一方、北米や 欧州 においては、参加金融機関数の拡大が課題となっている。米国で24h/ 7d リアルタイムペイメントシステムがカバーしている銀行口座数は 60%程度に過ぎず、他諸国においても直接接続している金融機関は一部の大手銀行のみであり、 中小銀行の多くは直接接続銀行のシステムを利用した間接接続の形態に止まる。また、その取引量においても全銀システムの取扱量は、件数、金額ともに圧倒的なボリュームであり、諸外国における利用状況とは大きく異なる。