日本の証券市場の動向 パート2:トレーディング環境の変化と技術革新を促すもの【日本語】
Abstract
(このレポートの英文版を"Capital Market Trends in Japan, Part 2: Drivers of Innovation and a Market in Transition "というタイトルで2013年5月9日に発表しました。)
市場構造の変化は、規制の変遷とテクノロジーの高度化から導かれますが、また、逆に、両者から誘発される市場構造変化もあり得えます。過去の経緯か らして、そうした変化は、業界全体にわたる「ビッグバン」的な形で生じることもあれば、長期にわたるゆるやかな進化的プロセスを取ることもあるでしょう。 米国におけるレギュレーションNMS や欧州における金融商品市場指令(MiFID)のような、規制の発達が起爆剤となったケースは、ビッグバン的な変化の代表例です。一方で、長期にわたるゆ るやかな進化は、テクノロジー・イノベーションの普及を通じて達成されます。テクノロジーは、時間をかけ、幅広く採用されるようになることで、市場構造を 根本から変えてしまいます。
セレントの最新レポート「日本の証券市場の動向」では、証券市場の動向について、激動の欧米市場のこれまでの経緯を踏まえ、日本市場の現状と今後について展望しています。
「PTS を使わずに、委託者への説明責任は果たせない時代となりました。大きなボラティリティが期待出来ない市場環境から、年金をはじめ財政問題を抱える機関投資 家は、これまで以上にバイサイドに対してパフォーマンスとリスクの最適化に関する備えを要求しています。最適な投資戦略の実現のため、バイサイドは、アル ゴリズム取引をはじめとした投資戦略の高度化と、適切なリスクの取得とリスク許容度を高めるためのトレーディング技術革新に取り組んでいます。」とアジア 金融サービスグループのシニアアナリスト、柳川英一郎は述べています。
パート2においては、パート1でレビューした取引所 ビジネスの変遷を、今日のトレーディング環境の与件として捉え、最良執行を巡る制度革新と市場構造の変化、トレーディング技術革新の状況、そして、それら の日本市場での現状を論述しています。また、そうした市場動向を踏まえ、複数の市場参加者へのインタビューを実施、各社における、日本の証券市場の課題認 識と取組について論述しています。いくつかの規制緩和は、さざ波として、統合後の日本取引所と日本の証券市場に変化を促し、最後には大きなうねりとなって 大きな変化をもたらすと予想され、2012年における私設取引所と信用取引に関する規制緩和はその典型といえるでしょう。
本レポートは、日本の証券市場に関する一連のレポートの第2弾です。29p、21図と10表で構成されています。