金利市場は、特に電子取引の普及と相次ぐ規制変更によって、コロナ禍前の10年間に既に実質的な構造変化が起こっていた。この変化はコロナ禍において加速し、主要セルサイドプロバイダーのテクノロジー予算と業務に大きな圧力をかけた。セレントは、こうした市場構造の変化に対応するためにテクノロジーをどのように活用しているのか、またパンデミック後に何が変わったのかを、ヘッドトレーダーに直接聞きたいと考えた。そこで様々な規模の複数のセルサイド機関の金利取引責任者にインタビューを行った。また、現在とコロナ前を比較するため、トレーダーを対象に2020年に実施したより広範な調査レポート「収斂する世界におけるトレーディングの変革」も活用した。
セレントは、調査およびインタビューから得たデータと、当社アナリストの市場テクノロジーに関する専門知識とを組み合わせ、金利取引市場構造とテクノロジースタックの現在と今後の展開について独自のインサイトを提供する。
主な調査結果
- コアテクノロジースタックのアップデートは認識されているものの、必要な投資は依然として技術スタック投資を圧倒し、当初割り当てられなかった予算の大部分を占めている。これがイノベーションを阻害し、競争力を低下させている。コアテクノロジースタックにもっとアジリティを注入することで改善につながり、収益の向上を促進する可能性がある。
- 金利の電子取引は、スピード、複雑さ、商品とデータの可用性に関する要件の増加と共に成長と進化を続けている。その結果、セルサイドのテクノロジー予算が圧迫され、従来のセルサイド企業がより競争力をもっていた他の分野からテクノロジー支出が転用されている。
- 新たな「デジタルネイティブ」顧客からの要求が高まっている。顧客行動の変化は電子取引よりもさらに進んでいるが、その多くはデジタルネイティブである。多くのプロバイダーはこの新たな現実と戦いながら、CRM、チャットボット、データ分析などのテクノロジーを利用して顧客エンゲージメントを促進している。
人工知能 (AI) は初期段階にあるが、自動化は今なお多くの参加者にとって重要なテーマである。
データラングリングは依然として課題である。多くの参加者は、電子取引プラットフォームからのデータ収集と分析は、特に従来のリレーションシップ管理からのインサイトと組み合わせることで、競争上の優位性が生まれる可能性があると考えている。彼らはデータからインサイトを抽出することに懸命に取り組んでいる。しかし、多くの参加者は依然として、データの構造化と理解に苦戦している。
カスタマイズが可能でアジャイル、高速、エンドツーエンドのソリューションをはたして提供できるのか、セルサイド企業はベンダーの能力に疑問を抱いており、依然として自社開発のソリューションに頼ることが多い。構築よりも購入を優先するのは、理想的な状態というより目的達成のための手段とみなされることが多い。
重要ポイント
セレントは、資本市場全体で共感を呼ぶ以下のトピックを発見した。
アジリティの組み込みは不可欠
アジリティを確実に組み込むため、テクノロジースタックを再検討する必要がある。テクノロジー戦略の一環として、市場構造と規制上の継続的な変化を想定しなければならない。セルサイドの参加者は、テクノロジーの変更が負担が大きすぎるという理由で、ビジネスの将来の方向性について妥協するべきではない。
データ基礎にはまだ注意が必要
分析能力を強化、拡張するには、データのインフラストラクチャおよび構造化に関する専門知識が必要である。アナリティクスを重視するあまり、データを構造化して理解する能力が軽視される可能性があり、銀行やベンダーにとっての機会も同様に軽視される可能性がある。
デジタルネイティブの願望
顧客は特にセルサイドとのやり取りにおいてデジタルネイティブであることを熱望しており、セルサイドにサポートを求めている。加速するデジタルトレンドの中で新たなニッチを見つけることが、従来のセルサイドビジネスの将来的な成功にとって最も重要になるだろう。それを判断することが業界全体の難題である。