株式オプション取引の電子化:新たな市場構造の構築に向けたテクノロジーの変革
Abstract
上場株式オプション市場は難しい局面を迎えつつ あります。同市場では2007年の契約件数が41%増加したのに加え、1セント刻みの価格制度の導入、「maker-taker」と呼ばれる新モデルの採用、バイサイドの機関投資家による関心の高まりといった動きがみられます。取引のレイテンシの短縮、取引所の照合およびオーダー・ルーティング・システム の改善、さらにはカスタマイズ化されたアルゴリズム取引やマルチアセット取引の普及などにより、2008年から2012年にかけて市場は大きく変化すると みられます。
米国株式オプション市場では今後数年間で構造的変化が進行するとみられ、流動性、簿価残高、レイテンシ、価格制度の改善などに一段と大きな注目が集まるで しょう。既に、「maker-taker」モデルや株式市場データの取り込みといった新たな価格モデルや市場モデルが導入されています。混雑するオプショ ン取引所の立会場ではこれまで取引の電子化はほとんど進んでいませんでしたが、現在は電子取引が主流となっています。ただし、オープン・アウトクライ方式の取引はなお上場オプション取引全体の29%を占めています。
セレントの最新レポート「株式オプション取引の電子化:新たな市場構造の構築に向けたテクノロジーの変革」は、米国の上場オプション市場全体に占める電子取引の割合が2008年の71%から2012年には85%に達すると予測しています。これは、機関投資家の取引やより複雑な注文の自動化が進むとの観測に基づくものです。
上場株式オプション市場では伝統的な投資運用会社による関心の高まり、バイサイドによるオプション・アルゴリズム取引の拡大、ポートフォリオの証拠金算出 における利点、1セント刻みのオプション価格導入などを背景に、2012年にかけて契約件数が年率25%のペースで増加すると予測されます。メッセージ 数、呼値、オプション行使の増加に伴い、ブローカー、取引所、スペシャリスト、マーケットメーカー、バイサイドを含む全ての市場参加者はテクノロジーの強化を迫られるでしょう。
「オプション市場は、現物市場と比べてなお流動性が細分化されており、メッセージや呼値の更新も多くなっています。同市場は事実上取引所取引のみに限定さ れる構造であるため、これまでは主に取引所のシステムがシステム強化の対象となってきました。取引分野の競争に伴うテクノロジー面の対応はダイレクト・ マーケット・アクセス(DMA)、複数資産の取引機能、アルゴリズム取引、ハードウェアおよびソフトウェアの更新、コロケーションサービスなど広範囲にわ たるでしょう。」とセレントのキャピタル・マーケット・プラクティスのシニアアナリストでレポートの共同執筆者であるデイビット・イーストホープは述べています。
テクノロジーをめぐる競争が激しさを増すにつれ、存在 感を示せないプレイヤーは脇に追いやられる状況となり、結果的に業界の再編や収斂が進む傾向が強まるとみられます。「独立した取引所の数は以前の7つから 現時点では5つに減っていますが、市場慣行や市場の不透明性を背景に新しいモデルと古いモデルの共存が続いています」ともう一人のレポート執筆者でキャピ タル・マーケット・プラクティスのアナリストであるシャーメイン・リーは述べています。
過去の例では、取引所プラットフォームは取引所間または取引所内で並列統合されています。今後は、かつては未開拓分野でリスクが高すぎると考えられていた オプション取引に対する幅広い層からの投資意欲の拡大に対応するため、この収益性の高い市場での競争が激化し、テクノロジーの変革を促すとみられます。変 化しつつある株式オプション市場で先頭に立つことを目指すプレイヤーにとって、テクノロジーは明らかな差別化要因となるでしょう。
本レポートは23図と13表を含む全60ページで構成されています。