テクノロジーを駆使した金融詐欺はますます巧妙になっており、金融機関やそのテクノロジーパートナーは、詐欺の検知・防止対策として、さまざまな予測ディープラーニングや生成AIモデルを活用した高度のソリューションを開発している。しかし、高度な不正防止モデルは、トランザクションやデータから分離された周辺ハードウェア上で実行されることが多いため、メインフレームコンピュータ上でミッションクリティカルなトランザクションを実行する大手企業では、AIモデルを大規模展開するにあたっての独自の問題が生じている。また、モデルの規模の拡大化・複雑化につれ、より多くの処理能力と技術リソースの必要性が求められている。
IBMは、2022年にIBM z16メインフレーム用のTelumプロセッサーをリリースし、メインフレーム環境でのAI推論を直接サポートするAIアクセラレーターを搭載することで、この問題を解決した。このブレークスルーにより、メインフレームから周辺の不正システムにコアトランザクションを送ることができるようになり、大手銀行でも、遅延やスループットの問題なく、あらゆるトランザクションに対する複雑な不正防止モデルのリアルタイム実行が可能となった。
IBMは現在、新しいz17システムの一部として第2世代のAIアクセラレーターをリリースしている。新しいアクセラレータはかなり大幅に強力で、複数のAIモデルを同時実行するのに十分なコンピューティング能力を持つ。また、大規模言語モデル(LLM) をメインフレーム環境で直接実行することも可能である。セレントは、LLMやその他のトランスフォーマーモデルが取引詐欺の検出に不可欠なツールとなり、これらのモデルを本番環境でリアルタイム実行できる機能が銀行やカード会社、決済期間などにおける不正防止に重要となることを予測している。
セレントは、Zメインフレームを導入している銀行、カード会社、決済機関が、この機能を使用し、代表的な取引だけではなく全ての取引に対して高度な不正防止モデルを実行すれば、理論的には全世界で年間1,900億米ドルの不正損失を削減できる可能性があると予測している。これは、一般的なTier 1銀行の場合、年間2億800万米ドル、Tier 2銀行では3,500万米ドルに相当する不正を防ぐことになる。セレントはさらに、Zメインフレームを導入している保険会社は、現在の検出方法に比べ、さらに830億米ドルの不正を防ぐことができると予測している。
レントによる予測
