10年という歳月がもたらす変化。オープンバンキングの概念は、2010年代半ばに欧州の銀行とフィンテック間の競争を激化させる方法として登場した。そして、この10年の間に、予期せぬ大きな出来事が2つあった。まずは、オープンバンキングが世界的に浸透し、60カ国以上もの国でフレームワークが採用もしくは開発されていること。そして2つ目は、これらのフレームワークがオープンバンキングという狭い範囲からオープンファイナンスというより広い範囲へと移行していることである。この変化は、銀行にとって大きなチャンスとリスクをもたらし、業界を大きく変える可能性を秘めている。
業界は、オープンファイナンスの潜在的なメリットを引き出す方法について多くの教訓を学んできた。何よりも重要なのは、オープンファイナンスが最終目的や結果ではないと認識すること。オープンファイナンスを、あくまでも一連の入力データや要素として捉え、効率性の向上や製品開発、銀行の新しい商業モデル支援など多様に使うのが最適である。
オープンファイナンスの支援によって改善できる側面は多数あるが、いずれも下記の3カテゴリーに分類できる。
- 現行のワークフロー強化による顧客体験向上とコスト削減
- 顧客エンゲージメントの向上と強化されたデジタル提案による顧客維持
- 新たな収益機会の獲得
これらのカテゴリにおける個々の導入事例は、単独で、もしくは任意の順序や組み合わせでのデリバリーが可能。商品・サービス、顧客体験の向上を目指して、これらの機会を積極的に活用している銀行が増えている。これまでの活動の多くは比較的小規模だったが、現在オープンバンキングやオープンファイナンス支援の導入事例を何らかの形で本番環境に採用している機関の数は着実に増えている。
セレントは、毎年実施しているDimensions調査で、銀行が商品開発の支援にどうオープンファイナンスを活用しているのかを追跡している。2023年には、銀行の12%が、商品開発支援目的でオープンバンキングまたはオープンファイナンスを積極的に使用していると回答した。この数字は2024年には24%と倍増しており、すべての地域において大きな成長が見られたことを示す。また、多くのオープンファイナンスの枠組みの拡大と成熟、およびそのメリットについても示されている。2025年、オープンファイナンスの採用率はさらに増加し、業界への浸透率は35〜38%になるであろうと予想される。
オープンファイナンスにおける業界の進展から、2つのことが分かる。まずは、時間が経つとともに、業界はますますオープンになり、データ共有が増えるということ。次は、これまでの取り組みにもかかわらず、銀行はオープンファイナンスを収益化する潜在的な機会にまだほとんど手をつけていないということ。これらは枠組みが成熟し拡大するにつれ変化する考慮すべき点である。銀行やベンダーにとっては、今が、効率的な活用に向けた計画をするチャンスだと言えるであろう。
Figure: Proportion of Banks in Tiers 1-6 with at Least One Open Banking or Open Finance Use Case in Production, 2023-2025
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Source: Celent
