バイサイドの企業は、昨年ほどの守りの姿勢ではないものの、投資および投資運用会社をめぐる見通しは依然として明るいとは言えない。市場が比較的好調出会った2024年末に調査を実施したが、その後、世界のマクロ経済環境が不安定になり、世界的な貿易摩擦や政策の不確実性に起因する景気後退リスクも高まっている。慣例的に、不況時には、投資家はより慎重になり、より安全な資産へシフトしたり静観的アプローチをとったりするようになるため、資産運用会社は資産流出や運用資産減少を経験することが多い。

今年のバイサイド調査から、2025年および2026年のIT予算において、増加と投資に慎重であることが伺える。2025年に向けてテクノロジー予算はわずかに増加を続けるものの、バイサイド企業におけるITの優先事項の決定は厳しく、ROIに重点を置いていることが示された。ほとんどの地域で増加率は低く、ひとまとまりの直接投資や成長志向投資を特徴とする規制当局主導のテクノロジー支出を最重視している。これまでに引き続き、大規模なクラウドの実現、高度なデータ分析、デジタル化に向けた投資の優先事項は不可欠となるであろう。より多くの企業が、単なる微調整ではなく、根本的なコアオペレーションの改革を目指している。'

今後、最終的に行き着くところはAIだと予測されるが、企業はまだまだこの新しい変化の波に戸惑いを見せている。デジタル化、高度なデータ分析、信頼性の高いデータ管理とデリバリーのための生成AI利用などの実社会における波を目の前にし、企業はこれからの動きを決める段階にきている。データイネーブルメントの取り組みは決して新しいものではないが、バイサイドの企業において、このAIの波に備えて「データ基盤」の強化と改良により力を入れるべきだとする声が高まっている。この状況の変化は、データイネーブルメントが、 生成AIや機械学習などのより高度な分析機能の導入へと変化するために有意義であると考えられる。

データへのAI活用については依然として問題が残っており、その問題はデータリスク、AIへの信頼、意思決定のバイアスなどに関する現在の課題と強くつながっている。この複雑な環境において成功するために、先見性の高い企業はデータ戦略の活性化に力を入れている。そのような企業は、ビジネスを強化し、最も突出した価値のある利用方法を求め、現代のクラウドデータインフラストラクチャに投資することで、AI関連の取り組みにおけるROIの最大化を目指している。

￥ 今年の「DIMENSIONS：ITの課題と優先事項 2025年版」レポートでは、北米、ヨーロッパ、アジアおよび新興市場におけるグローバルなバイサイド企業の計画に影響を与えるテクノロジーや製品投資、戦略的優先事項に関するインサイトを紹介している。資産運用会社、保険会社、ヘッジファンド、オルタナティブ運用会社、年金基金、政府系ファンドなど、さまざまな金融関係者から収集した調査データを基に分析を行った。企業は、同業他社を含めた業界全体のトレンドを理解することで、進化する市場のニーズに的確な自社戦略を立てることができるようになる。