コーポレートバンキング:好循環を創り出すための戦略示唆
コーポレートバンキングは進化のタイミングにある。テクノロジーの先駆者である大手金融機関だけでなく、デジタルの巨人やフィンテックとも効果的に競争するには、コーポレートバンキングは段階的かつ急速な進化を遂げる必要がある。プロダクト・セントリックなアプローチを止め、カストマー・セントリック、つまりワークフローを再考してカスタマージャーニーを改善するアプローチを採用する必要がある。ペーパーベースのプロセスをデジタル化し、直観的な意思決定からデータ分析を最優先に移行するために、顧客に対してより積極的な働きかけをする必要がある。
本稿は、コーポレートバンキングが3つの側面で優れた成果を上げる方法について考察する。
- トランザクションバンキングの成長要件
- 中小企業(SME)バンキングの事業機会と脅威
- コネクテッド・コーポレートバンキングへの進化の道筋
アセットを活用し、エンリッチメント、エンパワーメント、エンハンスメントに優れたこれらの銀行は、1兆ドル近くに及ぶグローバルコーポレートバンキング収益プールの、圧倒的なシェアを獲得する可能性がある。つまり、ここでも他産業同様なデジタル・デスラプション(グローバルレベルでの、winner-takes-all(勝者による利権の独占))の兆しが見える。邦銀は、そうしたベストプラクティスに学び、自らの強みを最大限に生かした独自のバリューチェーンを再形成するタイミングにある。そう、Jeff Bezos が毎年の株主報告に書くように、顧客の声を傾聴することから始めるべきだ。
本稿で分析する市場は、全ての邦銀が最優先で取り組むアジア太平洋地域(APAC)である。APACは、これまで世界の銀行収益全体の43%を創出し、中国市場がその成長戦略の中核であった。今後の成長エンジンは、中国だけではない。全世界的なマイナス金利、保護貿易主義の台頭、米中貿易摩擦、そしてブレグジットといった、不透明感の中でのコーポレートバンキングの成長は、マクロ経済動向に加え、テクノロジーがドライブするデジタルエコノミーの行方に大きく依存する。今こそ、テクノロジーが加速するコーポレートバンキングの進化を追求すべきだ。
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