日本における決済インフラの動向 | 次世代資金決済システムの胎動
パート5:全銀システムと銀行間決済ネットワークの未来
Key research questions
- これまでの金融市場インフラ高度化への取り組みと課題は何か?
- 次世代資金決済システムの骨子とは?
- 金融サービスの未来図にどのように取り組むべきか?
Abstract
本レポートシリーズは、セレントのペイメントタクソノミーに基づき、A) 決済手段とチャネル、B) 法人決済:銀行から法人顧客(金融法人を含む)に提供される決済サービス(ホールセール決済サービス、大口決済サービス)、C) 個人決済:主として銀行から個人顧客(小売店を含む)に提供される決済サービス(リテール決済サービス、小口決済サービス)の動向に言及する。加えて、各種決済サービスの背景、競争条件として、D) 金融市場インフラ(FMI)を捉える。
本稿パート5は、D) 金融市場インフラ(FMI)の最新動向を考察する。
世界中の国や地域が、金融市場インフラ(FMI)の高度化への取り組みを加速している。全銀システムは、24h/ 7dリアルタイムペイメント対応の決済インフラ提供に止まらず、その付加価値サービスの提供や多様なサービスを提供するノンバンク(資金決済事業者)の接続を通じて、次世代資金決済システムへ、そして次世代金融サービスのイノベーション・アリーナに進展すべきだ。
日本においては世界に先駆けて、1973 年の「第 1 次全銀システム」稼働当初から、平日日中帯に限りリアルタイムペイメントを実現していたが、2018 年 10 月に「全銀モアタイムシステム」が稼働したことにより、24h/ 7d 対応のリアルタイムペイメントが実現した。諸外国においては、決済インフラを刷新することにより、リアルタイムペイメントと 24h/ 7d の対応が同時に進められており、2008年の英国を皮切りに2017 年後半には北米、欧州の主要国・地域において対応が完了した。
日本では個人向けサービスに対応しない一部の銀行等を除き、 ほとんどの預金取扱金融機関が 24h/ 7d リアルタイムペイメントを実現する全銀モアタイムシステムに参加している。一方、北米や 欧州 においては、参加金融機関数の拡大が課題となっている。米国で24h/ 7d リアルタイムペイメントシステムがカバーしている銀行口座数は 60%程度に過ぎず、他諸国においても直接接続している金融機関は一部の大手銀行のみであり、 中小銀行の多くは直接接続銀行のシステムを利用した間接接続の形態に止まる。また、その取引量においても全銀システムの取扱量は、件数、金額ともに圧倒的なボリュームであり、諸外国における利用状況とは大きく異なる。
2014年金融庁による「決済業務等の高度化に関するスタディー・グループ」の組成以降、金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告書」(2015年12月)、SWIFTホワイトペーパー(2016年5月)による課題提起等をはさみ、5年が経過した2019年、日本の決済インフラの将来動向は、以下の大きなマイルストンが示された。
- 金融審議会「決済高度化官民推進会議」における全銀協の重点14項目
- 金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」報告書