決済インフラ高度化のグローバル動向
「決済インフラ」シリーズ パート3 ― ホールセールペイメント編のハイライト(その4)
本レポートシリーズは、セレントのペイメントタクソノミーに基づき、A) 決済手段とチャネル、B) 法人決済:主に銀行から(金融法人を含む)法人顧客に提供される決済サービス(ホールセール決済サービス、大口決済サービス)、C) 個人決済:主として銀行から(小売店を含む)個人顧客に提供される決済サービス(リテール決済サービス、小口決済サービス)の動向に言及する。加えて、各種決済サービスの背景、競争条件として、D) 金融市場インフラ(FMI)を捉える。
これまでに、日本の決済インフラの要諦である、全国銀行データ通信システム(全銀システム)をPart 1で、日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)をPart 2で考察した。
本Part 3では、B) 法人決済、すなわち大口決済、ホールセールペイメントに注目し、決済インフラの高度化、新たな技術の隆盛とサービス事業者の出現、そこでの新たな価値とリスクの連鎖を把握し、決済サービスの高度化やディスラプティブな決済サービスの創出において考慮すべきグローバルトレンドと、日本市場の現状、今後の取り組みについて言及する。
また、続くPart 4では、A) 決済手段とチャネルの多様化の進展、C) 個人顧客に提供される決済サービス(リテール決済サービス、小口決済サービス)の動向、そこでの組織とテクノロジー利用の動向に言及する。
本稿は、6回シリーズでそのエッセンスを紹介する、第4回である。
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世界の金融市場インフラ(FMI)は、決済インフラ高度化への歩みを加速
FMIを取り巻く規制上および金融業界全体のイニシアチブとして、APAC市場では、プログレッシブ、制限的、コラボレーティブの3種類のイニシアチブが顕在化している。プログレッシブおよび制限的イニシアチブは規制上の措置に基づいており、コラボレーティブイニシアチブは市場主導型である。
New Payments Platform(NPP)
オーストラリアは国内の競争とサービス品質を改善することを目指す積極的な規制当局である。2003年、オーストラリアはインターチェンジ手数料を引き下げ、後に上限を引き下げ、これによりデビットカードの普及が開始された。2013年、オーストラリアは、高速で大量の支払いを可能にするために、業界全体の支払いプラットフォームである新支払プラットフォーム(NPP)を開発した。 2018年2月に稼働したNPPは、オーストラリアの消費者、企業に各市場における金融サービスの成長機会を提供する。
スマートネーション
シンガポールはテクノロジーと教育に焦点を当ててきた。スマートネーションイニシアチブは、国家を「デジタルイノベーションによって推進される先進経済」に変革することに焦点を当てている。それはアイデンティティ、電子決済、モノのインターネット(IoT)に関するイニシアチブを含む多数の戦略的国家プロジェクトで構成され、革新と実験の文化を醸成した。この国家戦略の加速に向け、シンガポール金融管理局(MAS)は、参加者のエコシステム、オープンアーキテクチャエコノミー、強力な人材プールを開発する計画を含む、フィンテックの地域リーダーとしての地位を確立するための多数のイニシアチブを展開中である。
リアルタイムペイメント
現金以外の支払いが開始されて以来、これらの資金をできるだけ早く支払人から支払先に移動させ、流動性資金と同様に見なしたいという要望がFMI進化のドライバーとなった。キャッシュフローと流動性を管理する必要があり、商品をできるだけ早く受取り、資金を開放する必要がある法人顧客において特に優先される。現在41カ国のFMIにおいてリアルタイム支払い機能がある。オーストラリア、中国、香港、インド、日本、シンガポール、韓国、台湾、タイがこれらの国々の中に含まれ、マレーシアとベトナムは開発中である。