クレジット・デリバティブ取引電子化の展望
Abstract
セレントは、2007年までにクレジット・デリバティブ・インデックス取引の約半数が電子化される一方、クレジット・デフォルト・スワップでは、電子取引が本格化するのは早くても2006年初めになると予測します。
クレジット・デリバティブ市場が急速な拡大を続ける中、電子取引に移行する市場参加者が徐々に増えつつあります。ディーラーからは電子取引を望む声が出ており、顧客側も2005年には電子取引への移行に踏み出す見通しです。あるインターディーラー・ブローカーは市場で定評のある電子取引プラットフォームを導入しており、他社もこれに追随する可能性が高いとみられます。セレントの最新レポート「クレジット・デリバティブ取引電子化の展望」 は、様々なクレジット・デリバティブ商品の取引電子化の可能性を検証し、これが取引所やインターディーラー・ブローカーといった市場参加者に与える影響について分析しています。
クレジット・デリバティブ市場では標準化と自動化が急速に進みつつあります。ISDA(国際スワップデリバティブ協会)は、市場参加者による使用が可能な標準契約書やISDA推奨の標準プロセス(四半期ごとの取引決済など)を発表しています。また、自動化に関する実行期限の多くを2005年中に設定する野心的な目標を示していますが、これらは実現可能であると思われます。「市場の標準化は流動性の向上につながることから、いずれそのうちに、有力ディーラーがプライシング・エンジンを構築し、これを取引先のインターディーラー・ブローカーや取引所にリンクさせるでしょう。そうなれば、市場規模で電子取引が本格化するとみられます。ただし、現段階では、市場でこのような必要性は生じていません」と、セレントの証券・投資グループのアナリストで上記レポートの著者であるアダム・ジョセフソンは述べています。
現在、クレジット指数の全取引のうち約25%が電子取引によるものですが、2007年には50%近くに増えると予想されます。ただ、クレジット・デリバティブ取引の大規模な電子化を実現するためのインフラが整うまでには、少なくともあと1年はかかるでしょう。また、クレジット・デフォルト・スワップに関して言えば、取引の本格的な電子化は、市場の標準化と流動化が十分に達成される2006年初め以降になるとみられます。
今後、クレジット・デリバティブ市場は、債券市場と同じ足取りをたどるでしょう。90年代終わりに、多くの市場関係者はテクノロジーが債券取引に革命をもたらすと予測していました。債券市場に電子取引が導入されてすでに5年ほど経過しましたが、現時点で電子取引は全体のせいぜい10~15%を占めるにすぎず、なお大きな拡大余地が残されています。債券市場の現状は、おそらく2010年時点におけるクレジット・デリバティブ市場の状況に近いといえるでしょう。