米国住宅ローン危機の病状
Abstract
ここ9ヶ月間、世界のクレジット市場では「不透明感からの逃避」による流動性の混乱がみられました。その結果、あらゆる資産クラスや地域で評価損が発生し、米国では劇的な利下げが実施されたほか、かつては米国の5大投資銀行に名を連ねたベアー・スターンズ証券の破綻を招きました。
過去9ヶ月間に金融市場を襲った混乱の速さ、深刻度とその規模は、多くの市場参加者にとって予想外のものでした。米国のサブプライムローン問題に端を発した危機は、全世界的な信用収縮に発展しました。その事態の変化は目を見張るものでした。セレントの最新レポート「米国住宅ローン危機の病状」は、米国のサブプライム問題が世界の主要経済の後退を引き起こした過程を、以下の疑問に答えるかたちで明らかにしています。
- 何が実際に起こったのか?
- なぜ起こったのか?
- 米国の住宅ローン業界は今後どう変わるのか?
混乱の核心になっているのは、住宅ローンをめぐるビジネスモデルの変化です。資産の証券化が飛躍的に発展したことで、単純なオリジネート・トゥ・ホールド(Originate to Hold)モデルはより複雑なオリジネート・トゥ・ディスビュート(Originate to distribute)モデルと呼ばれる代替モデルに進化しました。このモデルのインセンティブが低所得者向け住宅ローンの大量組成を促す結果となりました。信用リスクはローンをオリジネートした金融機関から分離されて、リスク負担証券というかたちで資本市場を通じて分散されるため、リスクの拡散を伴います。米国では住宅価格の下落によって多額債務者の多くが債務不履行に陥り、このシステムの脆弱さが露呈しました。これに伴う損失の一部は、証券化市場を通じて世界中の金融機関に波及していきました。
出典: Oliver Wyman
「オリジネート・トゥ・ディストリビュート(Originate to distribute)モデルは時代遅れになったわけではありません。証券化のニーズはなお存在しており、発行される債券に関心を示す投資家もいるはずです。従って、こうしたモデルは今後も存続するとみられますが、リスクを軽減したものになっていくことは間違いないでしょう。」」とセレント証券プラクティスのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者マイーズ・ハバルは述べています。
本レポートは22図と1表を含む27ページで構成されています。