独立代理店調査:SEMCIは本当に必要か?
Abstract
SEMCI(Single Entry Multiple Carrier Interface=代理店が1度入力した保険見積り用データが複数の保険会社に送信されるシステム)は、独立代理店にとって便利なシステムであることは明らかです。問題は、保険会社側にコストに見合うだけの効果がもたらされるかどうかという点です。
SEMCIを巡る議論は、その前提が充分吟味されないまま拡大しているように思われます。セレントの最新レポート「独立代理店調査:SEMCIは本当に必要か?」は、代理店の視点に立ってこれらの前提を見直しています。
「代理店からみれば、SEMCIのコンセプトはすばらしいといえます。しかし、代理店がSEMCIの恩恵を受ける一方で、保険会社は多大なコスト負担を強いられるのが現状です」と、セレントのシニアアナリストで上記レポートの著者であるクレイグ・ウェーバーは指摘しています。
「保険会社はシステムコストという負担を負うだけにとどまりません。商品や新規契約などコアサービスのコモディティ化が進むと、保険会社は差別化を図ることが難しくなります。また、代理店にとってSEMCIが『贅沢品』であることに変わりはなく、保険会社を選ぶ際にはSEMCIの利用が可能かどうかより商品や価格を優先するのが普通です。」
ウェーバーは、代理店システムと保険会社が提供している代理店向けポータルサイトには機能面で重複がみられると指摘しています。「ただし、ポータルサイトの方が機能が充実している場合も多く、この点もSEMCIの魅力を減ずる要因となっています。」
今回のレポートで調査対象となった代理店の半数以上は、業務の効率化さえ実現できれば、代理店システムか保険会社の独自システムのどちらを利用しても構わないと答えています。(上の円グラフを参照)
レポートは、代理店システムおよび保険会社の独自システムの利用を巡る諸問題についての代理店側の意見をまとめたもので、2004年6月に実施した独立代理店調査の結果に基づいています。
上記以外にレポートで取り上げた主な分析結果は以下のとおりです。
- 代理店システムの市場が細分化しているため、保険会社は多様化した代理店のニーズに対応しにくくなっている。
- 代理店システムの主要業務(手数料データの確認、保険会社のシステムとのリアルタイムリンク、データアップロード、新規ビジネスの状況確認など)におけるパフォーマンスに対する代理店の満足度が低い。
- 代理店はシステム機能を重視するため、代理店システムと保険会社の独自システムの両方をサポートし、様々なビジネスニーズへの対応が可能な保険会社を選ぶ傾向が強くなっている。
- 新規契約の見積りを複数の保険会社から取る損害保険代理店が増える中、複数のシステムにデータを再入力することへの不満が広がっている。