デジタルで中所得国の罠を超える
2018/06/14
Eiichiro Yanagawa
ABFリテールバンキングフォーラムを振り返り
ASEAN諸国が抱える「中所得国の罠」
ASEAN は労働力人口の増加と生産性の向上により、堅調な成長を続けている。
ASEAN-10の人口は、2015 年時点で6.3 億人(世界人口の1 割弱)、2030 年には7.3 億人にまで増加する。各国の出生率は総じてみれば緩やかな低下傾向(女性1人あたり:タイ(1.5)、マレーシア(1.9))にあるが、フィリピン(2.9)、インドネシア(2.4)などを中心に人口増加が見込まれる。(UN: World Population Prospects)
労働力人口も増加が続く。ASEAN 人口の約9 割を占める主要5 カ国(ASEAN-5)の労働力人口は、2030 年には3.3 億人まで増加する。伸び率は緩やかな縮小傾向をたどる見通しであるが、インフラ資本の蓄積や人的資本の能力向上を通じて生産性の向上が続く。ASEAN の潜在成長率は2030 年時点でも4%程度を維持し、2030 年の一人当たり所得は1万ドルに迫る。(IMF: World Economic Outlook)
一方、中所得国(GNI/Capita: 1,006 ~12,235 $, WB: New country classifications by income level)に達した後はそこからは抜け出せないという「中進国の罠」に陥る可能性も議論されている。OECD- Southeast Asia Regional Programme (SEARP) 他の、政策レベルの討議では、①生産性の向上、②民主的な政治基盤の確立、③高齢化の進展に伴う社会基盤の変革が主要な取り組みとされるが、そのいずれもがデジタルにより加速される。