「システム移行はハイリスクでコストが高く、予定通りにはいかないものである」とよく言われているが、果たして、これは今も正当な警告といえるのだろうか。本レポートの作成にあたって実施した調査[1]によると、回答者の94%が大幅な遅れを経験しているなど、重大なリスクがあることは明らかであり、最も深刻なケースでは(図1を参照)、比較的小規模な保険会社において保険契約管理システム(PAS)などの中核システムで重大な遅延が発生していた。しかし、この調査では楽観的になれる理由やより良い成果が期待できる根拠も明らかになっている。すなわち、ここで解明された根本原因は対処可能であり、現在は新たなツールや方法を利用することでリスクの低減と成果の向上が可能になっている。
[1]本レポートを作成するにあたり、セレントは31の保険会社(うち、24社は北米企業、7社は北米以外の企業)を対象に調査を行った。
失敗から学ばない手はない。これは業界として克服すべき課題である。本レポートで焦点を当てたのは、これらの問題の根本原因を理解し、変化を考慮した上で、重要な教訓を示すことである。しかし、この調査の結果と根本原因の究明により、以下のような重要な課題も明らかになった。
- レガシーシステムからの移行中または新しいシステムの構成中に起こる予期せぬ事態
- あらゆる移行に伴って生じる特殊な要求に対応するためのデータスキルの不足
- 限定的な製品専門知識
- 困難なガバナンスと変更管理
- 複合的な適正評価とRFP(提案依頼書)/契約のプロセスから生じるリスク
以下は調査回答者からの声であり、これらは上記の重要な課題のいくつかを浮き彫りにしている。
<上記黄色コラム訳>
[当社がシステムを移行するためには]新しい保険契約管理システムに搭載されている機能の範囲を理解し、カバーされていない機能についてはどのように対応するか決定する必要がある。
最高情報責任者
2つのシステム[レガシーシステムと新システム]は根本的に違うものだった。当社は別のやり方でシステムを買い替えるべきだった…例えば、外部の[専門家]をもっと活用することもできたはずだ。
最高財務責任者、生保保険および年金保険会社
その他にも、本レポートでは、システム移行の動機の変化など、調査から得られた主な結果について検証し、最後に、より良い結果を得るために保険会社ができる別の対応について、重要な教訓を紹介する。