モデルアワードプログラムを振り返る:ケーススタディレポートに学ぶ ー 繁栄へのギアチェンジ
モデルアワードプログラム2022:日本語レポートシリーズを刊行
2022年、セレントの「イノベーション&インサイト(I&I)」イベントは16年目を迎えました。このイベントは、銀行、保険、ウェルスマネジメント、キャピタルマーケッツ、リスク & コンプライアンスなど、金融サービスにおける優れたテクノロジーを表彰するものです。
3月15日から17日までの3日間、バーチャルサミットを開催し、ライブプレゼンテーション、モデルアワード受賞プロジェクトの発表、受賞者のケーススタディビデオ、ファイアーサイドチャット、ブレイクアウトセッションなどを実施しました。I&I Week 2022を成功に導いたのは、アワードプログラムへの応募者、受賞者、イベントスポンサー、プレゼンター、そしてイベントにご参加いただいた皆様です。
イベント終了後も、イノベーション&インサイト・ウィークのプラットフォームには、多くの無料資料が用意されていますので、ぜひご利用ください。
- インタビューやライブセッションのリプレイ
- アワード受賞者の革新的な導入事例を紹介したビデオ
- ケーススタディレポートへのリンク
繁栄へのギアチェンジ:6つのテクノロジー・テーマ
今年の全体テーマは「thrive = 繁栄」でした。セレントはモデルアワードプログラムを通じて、実に多くのそして多様な金融機関が、パンデミックの後もデジタル技術への投資を加速させ、「繁栄」への新たな道を歩みだしたことを目の当たりにしてきました。今年のアワード応募プロジェクトもまた、本当に素晴らしい結果を産み出しました。金融機関がどのようにテクノロジーを活用して繁栄へのギアチェンジを進めているか?ここでは、今年のアワード受賞プロジェクトにおける6つの主要なテーマについて振り返ります。
- クラウドの活用:もはや「クラウドを使うべきか」という課題ではなく、「いつ、どのように使うか」という取り組みに進化しました。ここ数年のクラウドの進展は目覚しく、あらゆる業界で「オールインプラットフォーム」、「特定課題に向けたソリューションの見直し」、「業界横断的なエコシステムの変革」など、セレントモデルアワード受賞の様々なプロジェクトを支えていました。
- エンゲージメントとエンパワーメントによる顧客体験の向上:金融機関は、顧客経験(CX)への取り組みが単なる顧客インターフェース(UI)の改善に止まらず、顧客にとっての成果につながることを認識することで、CX改革を通じた繁栄へのギアチェンジに結び付けています。今年の受賞プロジェクトは、顧客サービスの革新に焦点を当てたUI/ CX開発に重点を置いていることはそのことを反映しています。その取り組みは、これまで重視されてきたフロントオフィスでの顧客接点の改善に止まらず、バリューチェーン全体における各部門の役割(オペレーション、商品開発、顧客サービスなど)が顧客体験に影響を与えることを理解し、ミドルオフィスやバックオフィスも関与したプロジェクトに展開されています。
- 人工知能(AI)を金融サービスの現場に投入する:AIは、機械学習やデータ解析を含めて、その膨大で複雑な適用範囲が拡大し、その適用の洗練度が増しています。金融サービスにおけるAIの代表的な活用事例としては、保険金請求が却下される理由を特定し、再申請のための時間を大幅に削減した事例や、オンボーディングから請求・支払いまでのカスタマージャーニー全体を評価し、効率性を追求するとともにプロセス全体をデジタル化した事例、銀行が顧客に資金不足のリスクを予め通知することで、当座貸越に関する手数料収入の減少を招きつつも、顧客ロイヤルティ向上のための長期的な投資として取り組まれた事例などが顕著な事例として挙げられます。
- エコシステムの活用とレガシーの改善:レガシーシステムは技術的負債を生み、アジリティを阻害する可能性があります。しかし、レガシーシステムとエコシステム改革を巧みに導入すれば、バリューチェーンに新たな互換性を持たせることができます。そのためには、技術インフラ、運用モデル、ビジネスモデル、ドメインアプリケーション、そしてビジネスマインドセット全般を評価する必要があります。今年の、レガシーモダナイゼーション分野における受賞プロジェクトは、エコシステムを技術的な負債の解消に向けて活用した点に注目が集まりました。
- デジタル化(DX): デジタル化の進展に伴い、金融機関はフロントオフィスからバックオフィスまで、あらゆる場所でデジタル化を進めています。このテーマでは、Oliver WymanのパートナーであるRick Chavez氏とSixth Street Partnersのパートナー兼副会長であるMarty Chavez氏による、ビジネスとソフトウェアがどのように絡み合っているかを議論するビデオを提供しました。新たな事業機会の実現のため、テクノロジーを適用してどのようにビジネスを改革するのか?そして、それを実現した後、どのようにしてその成長を持続してゆくのか?Goldman Sachsの元CIOとの対話は、DXの本質を鋭く指摘しています。
- データによる新たな価値の創出:新しいテクノロジーが普及するにつれ、利用可能なデータから価値を抽出し提供するためには、包括的なアプローチが必要となります。データの種別や利用目的の細分化に加えて、イノベーションの実行には、戦略的な焦点、イノベーションのための組織化、創造性の文化、デザイン思考の重視、科学的手法への依存、ダイナミックなプランニングが必要とされます。
金融機関の進むべき道を示す
セレントの「イノベーション&インサイトウィーク2022」では、受賞プロジェクトを通じて明らかになったテーマに加え、金融機関に広く影響を与えるであろう業界および消費者の幅広いトレンドを取り上げました。
金融機関は、顧客にとって何が最善か、あるいは顧客にとって何が問題であるかに一層注視する必要があります。米国の個人貯蓄率は、パンデミック時に急激に上昇しましたが、現在は通常の水準に戻りつつあります。消費者の購買心理は、過去数年間に起きた多くの変化に対して人々が不安を抱いたままであることを反映して、3年ぶりの低水準にあります。
各社が自社の進むべき道を示すためにトレンドやベストプラクティスを検討する際には、ファンダメンタルズに注目することが重要です。
- 自社の現状を把握すること
- 自社の強みや可能性を含む、差別化されたバリュープロポジションを知ること
- その全てをひとりではできないことなので、パートナーやテクノロジーを特定すること
- 常に顧客を念頭に置き、絶え間なくイノベーションを実行すること
成功し続けるためには、常に新しいものに目を向け、他者と協力する方法を学び、これからも起こり続けるであろう「驚き」に迅速に適応していくことが必要です。
モデルアワードプログラム2022とケーススタディレポート
最新テクノロジーを最大限に活用して金融機関のあらゆる業務を最適化するとどうなるか?
この問いに答えるべく、セレントが毎年開催しているモデルアワードでは、金融サービス業界における優れたテクノロジーを表彰しています。アワードプログラムは、特にCOVID-19の大流行に見られるように、困難な状況下でテクノロジーがいかにイノベーションを推進したかを示す実例に焦点を当てています。
2021年10月に締め切られたノミネート期間中、セレントは約50の国と地域から300件以上の応募を受けました。モデルアワードプログラム2022は、50の受賞プロジェクトを選定し世界中で共有される金融イノベーションとテクノロジー活用の方法論を示しています。
モデルアワード受賞プロジェクトの日本語レポート、日本語ウェビナーはこちらからご覧頂けます。是非、貴社のリサーチ・ライブラリーに加えて下さい。金融サービスのイノベーションを加速した事例に巡り合えます。
モデルウェルスマネジャー2022 | BBVA SWITZERLAND: 富裕層・マス富裕層の暗号資産の保管・取引を可能にするバンキングサービス 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
BBVAは、セレント・モデルウェルスマネージャーアワード(商品とプラットフォーム部門)を受賞した。BBVAスイスの銀行業務にデジタル資産を取り入れたことは、BBVAにとって戦略上非常に重要な出来事であった。伝統的な資産クラスと暗号を統合したシームレスな体験を顧客に提供することは、スケーラブルな技術インフラと暗号取引を可能にするカストディ/クリアリング・サービスへの多大な投資を意味した。また、現地の銀行規制当局と深く透明性のある協力関係を築き、顧客基盤の教育を目的とした明確なコミュニケーション戦略も必要であった。
モデルリスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー2022 | DBS BANK: 企業の信用リスク管理プロセスの再構築 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
DBS Bankは、コーポレートクレジットにおけるオリジネーションから財務分析、承認に至るプロセスのためのワンストップソリューションを構築することで、企業の信用リスク管理を再構築した。
新しいマイクロサービスベースのプラットフォームによってワークフローをデジタル化し、生産性の向上、より強力でタイムリーなリスク管理、プロセスの簡素化を実現している。このプロジェクトは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてシフト勤務の必要性が生じたことでスタートしたが、信用リスクのプロセスをデジタル化するという長年の野心的な構想を実現するものでもある。このコーポレートクレジットのプラットフォームには主要なデータが格納されており、データサイエンス、自然言語処理 (NLP) および自然言語生成 (NLG)、人工知能 (AI)、機械学習、APIを活用することで、企業顧客のクレジット評価に関するインサイトが強化される。
モデルバンク・オブ・ザ・イヤー2022 | TEACHERS FEDERAL CREDIT UNION: ハイテク、ハイタッチの顧客エンゲージメントで成長を加速 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
金融機関がデジタルトランスフォーメーション (DX) を進める必要性が高まってきたのは、ここ2年のことである。多くの金融機関はDXに向けて様々な段階にあるが、すべての金融機関が同じ条件にあるというわけではない。よく「規模が重要である」と言われるが、これは、大規模な金融機関ほどITに多額の予算を投じ、計画と実行のために一流のスタッフを採用してトレーニングできるためである。また、金融機関のタイプも重要と言われている。例えば、営利目的の上場銀行は、非営利で組合員が所有するクレジットユニオンや協同組合銀行よりも、テクノロジーの計画、技術革新、高度化の点で優れていると考えられがちである。しかし、このセレントのケーススタディでは、こうした見方を覆す結果が示されている。
Teachers Federal Credit Unionは、87億ドルの資産規模のクレジットユニオンが実施できるDXの固定概念を打ち破った。複数の分野 (企業データ管理、一元管理されたカスタマーリレーションシップ管理、最適化されたバックオフィスシステムの統合) においてDX戦略を実行した手腕を評価して、セレントはTeachers Federal Credit Unionをモデルバンク・オブ・ザ・イヤー2022に選出した。
モデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー2022 | TOGGLE: FARMERS保険グループのイノベーションラボ 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
セレントは、モデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー2022にToggleを選出した。ToggleはFarmers Insurance Group内のイノベーションラボであり、独自ブランドを持つ事業部門となっている。同社が設立された目的は、次世代の保険顧客の固有ニーズに合わせた商品を開発することである。現在販売されている商品は、レンターズ保険と個人自動車保険の2種類だが、今後追加が予定されている。このケーススタディでは、Toggleのイノベーションへのアプローチ、同社が開発した商品、達成した成果、および将来の計画について検証する。
モデルアセットマネジャー2022 | QSUPER: エンタープライズデータプラットフォームのアジャイル実装 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
QSuperのエンタープライズ・データマネジメント・プラットフォーム・プロジェクトは、セレントのモデルアセットマネジャー・アワード2022テクノロジーインフラの最新化部門を受賞した。
この戦略的プロジェクトでQSuperは、最新の成熟した運用データ管理機能の構築に成功した。これは、好調な運用パフォーマンスによって、加入者の成果を最大化するための柔軟なオペレーション基盤として機能するものである。
このセレントのケーススタディでは、”time-to-value” (価値を実感するまでの時間) の短縮に向け、最新の柔軟なエンタープライズデータプラットフォームを活用して新しいデータイネーブルメント機能を提供する際に直面した大きな障害をQSuperがどのように克服したか、またその結果、どのようにデータオンボーディングの高速化、データのオペレーションと品質の向上、ユーザー構成全体におけるデータの信頼性向上を実現したかについて紹介している。
モデルセルサイド2022 | GOLDMAN SACHS LEGEND: コラボレーションによるデータ管理の革新 【日本語レポート】 | 【日本語ウェビナー】
Goldman SachsとFINOSが提供するオープンソースのテクノロジプラットフォームであるLegendは、金融サービス業界全体で実用的なデータへのタイムリーなアクセスを確保するという急速に拡大する課題に取り組むものである。Legendは、コラボレーションの向上に向けて共有され標準化されたデータモデルを構築し、データの調査、定義、接続および事業プロセスへの統合を可能にするソリューションを提供している。また、複雑なコードを直感的なインターフェースに置き換え、変更を透過的に表示・説明することで、斬新な機能を使って誰もが貢献できるようになり、データのサイロ化やビジネスとエンジニアリングの歴史的な対立という問題も解消される。
モデルアワードプログラムを振り返る:プログラム概要と業界動向、受賞企業の取り組み
- 基調講演 ― 繁栄へのギアチェンジ
- PART 1 ― ウェルスマネジメントプログラム
- PART 2 ― リスクマネジメントプログラム
- PART 3 ― 銀行プログラム | #1 コーポレートバンキング
- PART 3 ― 銀行プログラム | #2 ペイメントとオープンエコシステム
- PART 3 ― 銀行プログラム | #3 リテールバンキング
- PART 4 ― 保険プログラム | #1 データ/ アナリティクスとAI、デジタル/ エマージングテクノロジー
- PART 4 ― 保険プログラム | #2 顧客エクスペリエンスのトランスフォーメーション、イノベーションの実践
- PART 4 ― 保険プログラム | #3 レガシー/ エコシステムのトランスフォーメーション、モデルインシュアラー・オブ・ザ・イヤー
- PART 5 ― キャピタルマーケッツプログラム
***
次は、貴社の出番です。
セレント・モデルアワード・プログラム2023への応募受付は、2022年6月27日に開始し、2022年10月14日に締め切ります。