パーソナル・キャッシュ・マネジメント・サービス: コンバージェンスの時代到来
Abstract
セレントでは、銀行が個人顧客に提供する財務管理およびペイメントの総合サービスを「パーソナル・キャッシュ・マネジメント・サービス(PCMS)」と呼んでいます。セレントの調査では、ビルペイメントの処理業者、オンライン・バンキングのプロバイダー、サードパーティのテクノロジーベンダーなどが、銀行のPCMSをサポートする様々なアプリケーションの開発に取り組んでいる実態を明らかにしています。
セレントの最新レポート「パーソナル・キャッシュ・マネジメント・サービス:コンバージェンスの時代到来」は、PCMSサービスの拡充を促すビジネス要因とサービスを構成する様々な要素がどのように集約しているか示しています。ビルペイメント(請求書決済)の最新動向を調査した結果、「コンバージェンス(統合)」の波が押寄せてきていることがわかりました。2006年中の開始が見込まれる次世代のオンライン・バンキング・サービスは、送金、集計、個人の財務管理(PFM)などのサービスとビルペイメントが一体化されたこれまでにない内容となる見通しです。
今回のレポートを執筆したセレントのシニアアナリストダン・シャットは次のようにコメントしています。「PCMSが注目される背景には、管理、顧客主体のサービス、収益創出の機会といった要因が業界の主要な原動力となっていることがあります。その結果、銀行がコスト構造や収益構造の管理を強化する中で、新たな競争環境が形成されています。この動きは、処理業者や電子メールプロバイダー、与信評価会社、「PFM Lite」アプリケーション・プロバイダー間の新たな提携関係を促すでしょう。また、チェックフリー社や多数のオンライン・バンキング・サービス・プロバイダーが、PCMSのフルサービスプロバイダーとしての地位を巡って直接競合するケースも増えそうです。」
レポートの主な論点は、以下のとおりです。
- 現在、ビルペイメントの20%はオンライン・チャネルを通じて行われています。請求元企業のウェブサイト経由で行われるビルペイメントは現在全体の9%を占めていますが、2007年には13%に増加すると見られます。一方、銀行のウェブサイトを通じたビルペイメントは11%から16%に増える見通しです。オンライン・チャネルの利用が拡大する中、先行する銀行各社は、サービスと機能の拡充によるサービスバリューの向上手段を引続き探究していくでしょう。
- PFMアプリケーション・ユーザーの70%が日常的に利用している機能は、本来ソフトウェアが備えている機能全体の30%程度にすぎません。セレントは、日常的に使われるこうした機能を「PFM Lite」と呼んでいますが、その主なものは支出管理、資金計画トラッキング、口座閲覧サービスなどです。銀行やそのベンダーは、銀行のオンライン・チャネルに「PFM Lite」サービスを組み入れることで、より優れた顧客主体のサービスを実現しています。
- ペイメント・ウェアハウジングは、今やコンスタントに銀行に価値をもたらしています。大手銀行はビルペイメントサービスの様々な側面で、オンライン・バンキング・プロバイダーに助力を益々求めています。たとえば、2004年の時点で大手銀行の55%がビルペイメントサービスをオンライン・バンキング・プロバイダーに依存しています。これは2000年の25%からの増加です。また、オンライン・バンキング・プロバイダーとペイメント・ウェアハウジングのライセンス契約を結んでいる銀行の割合も、20%から65%に上昇しています。銀行は今後もこうした方法で、決済コストを抑制する一方、顧客動向を把握する上で有効な顧客のペイメント情報の収集を進めていくでしょう。
- ビルペイメントサービスを無料化する動きも広がっており、トップ銀行10行のうち7行が現在無料サービスを提供しています。こうした取引を収益に直結させたいとの強い意向を受けて、ビルペイメント商品を創出する新たな無料化の動きは生まれてきました。
- 一部のベンダーが、フィッシング詐欺に対抗し文書をより手軽に暗号化する方法を開発したことから、請求書の送付や支払手続きのチャネルとして、再び電子メールの可能性が浮かび上がってきました。より高度に洗練されたPCMS(警告機能など)の提供を進める銀行と、ビルペイメントの円滑化につながるチャネルの活用を目指す請求元企業の双方にとって、電子メールは益々重要なチャネルとなるでしょう。
このレポートは24図と4表を含む全54ページで構成されています。