2003保険会社のCIO/CTO調査:IT投資に おける圧力、優先課題、プロジェクト、 計画
Abstract
先ごろセレントが米保険会社を対象に行った41項目の大掛かりな調査結果から、保険会社がIT投資をする上での動機づけ、優先課題、現在の活動やプロジェクト、将来の計画に関する詳細な情報が得られました。
セレントは、米保険業界のIT投資における優先課題、行動パターン、プロジェクト、インフラについて詳細な情報を得るため、今年夏から秋にかけて保険会社のIT部門幹部20人を対象に大掛かりな調査を行いました。回答者の65%はこれら保険会社のCIOまたはCTOで、残りの大半はシニア・ヴァイスプレジデントまたはヴァイスプレジデントクラスの役職者となっています。また、生命保険・医療保険と損害保険の分野別では4対6という割合でした。回答者が所属する企業規模の比率は大手保険会社が55%、中規模および小規模がそれぞれ30%、15%となっています。
「保険会社のIT部門は大きな圧力にさらされています。今回の調査で回答者が他の項目を大きく引き離して関心事の第一位に挙げたのは、十分な人的・物的資源の確保でした。だたし、競争力の維持や新しいコンプライアンスへの準拠といった項目も上位に挙げられています。IT予算とスタッフレベルは全般的に徐々に上昇する傾向にありますが、需要に追いついているといえません。一方、保険会社は、IT投資が適所へと確実に振り向けられるよう、業務部門とIT部門の協調を図ることにも一層注力しています」と、上記レポートの主要著者でセレントの保険グループマネジャーであるマシュー・ジョセフォウイッツは述べています。
今回の調査結果からは、投資状況や最大関心事を把握できるだけでなく、その他のキーとなる注目分野も数多く明らかになっています。具体的には、全体の優先課題と業務部門からの圧力、業務・IT部門の協調と現在の優先分野、現在進行中のプロジェクト、ROIの最大化などです。同レポートには40以上にのぼるプロジェクト分野の調査結果をチャートに示して掲載しています。例として挙げると、セキュリティとサーベンス・オクスリー法への準拠、ワイアレスおよびインスタント・メッセージ、アウトソーシング、異なるプラットフォームやデータベースおよび技術基準(J2EE、.NET、ACORD XMLなど)の現在または将来の利用状況、レガシーシステムの問題、ベンダーの利用とその選好度、IT資産の管理といった他のIT管理課題、「シックスシグマ」やSEIの能力習熟度モデルのような品質管理手法の採用など、広範囲にわたっています。
同調査の主な結論として以下の点が挙げられます。
1. 注力する主要分野としては商品開発であり、最優先課題としてはセキュリティ対策をそれぞれ挙げる傾向が全体的に強いといえます。また、最近行ったプロジェクトのうち最大のROIを生み出したものは、保険契約管理システム、イメージング、データの利用を挙げる回答が多くみられました。
2. 大多数の回答者はレガシーシステムが業務効率を妨げていると指摘していますが、実際のシステム入れ換えはなお数年先になるというのが大方の実態です。ただし、保険業界でも古いシステムをそのまま全社で使い続けるのではなく、業務単位などの部分的なリプレースから着手するという戦略を採り始めています。
3. コストを抑えて業務を拡大するという難題をクリアするため、国内および国外業者にIT業務を外部委託している例は多いようですが、業務プロセスのアウトソーシング(BPO)はまだあまり一般的ではないようです。一部のIT業務については、今後外部委託先を国内業者に戻す動きが予想されますが、BPOに関しては国外業者に対する需要がやや拡大する見通しです。
4. また、より安価なインフラへとシフトする動きもみられます。回答者のほとんどが、今後WindowsやMS-SQLに対する依存度を高める一方、メインフレームやDB2への依存度を減らす計画であることを明らかにしています。また、.NETは現時点ではJ2EEほど広く普及していないものの、徐々にプレゼンスを高めつつあります。一方、回答者のうち大多数の企業が現行のシステムにACORD XML標準を採用しており、18ヶ月以内に投資収益が黒字に転じる見通しであると回答しています。
5. システムの「購入」か「自社開発」か、という選択に関しては、前者が再び優勢を強めていることは明らかです。しかし、ベンダーの提供するシステムには「まずますの水準」しか期待していないとの回答が多く、単独ベンダーからシステム一式を購入するよりも、ベンダーは統一せずに最良のソリューションを組み合わせたシステムを構築する方が好ましいとする回答が大勢を占めています。
同レポートは、保険会社のCIO/CTOならびにIT部門のスタッフにとって指標および戦略計画のツールとして有効であるだけでなく、サービスおよびソリューションプロバイダにとっても貴重な市場情報を提供するものです。尚、同レポートの本文は全50ページで、文中には調査結果を示す36のグラフも掲載されています。