レガシー・モダナイゼーション(その4):レガシーを再生産しないモダナイゼーション

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14 October 2015
Eiichiro Yanagawa

本稿では日本の金融業界における、レガシー・モダナイゼーションの現状と今後の方向性を考察する。

第1回では2015年春に実施した、レガシー・モダナイゼーション・サーベイ2015の結果から日本のレガシー現代化の現状を明らかにした。第2回では、幾度となく現代化の荒波を経験し、進化し続ける自動車産業の歴史に知見を求めた。第3回以降、目線を保険業界に特化し、保険会社にとって現代化の意味するところを述べた。最終回となる本稿では、レガシーを再生産しないモダナイゼーションを提言する。

ランドスケープとターゲティング

自社に固有な、暗黙知としてのシステムマップを、ステークホルダーに理解可能なシステム概念図に書き起こすことは重要である。加えて、業界に共通な、形式知としてのシステムランドスケープ(実現するビジネスや関与するステークホルダーの単位での、基幹システムの構成要素図)に展開することで、自社に固有な要素が浮かび上がる。基幹システムを自ら設計し、開発し、運用し、保守してきた日本の保険会社は、こうした作業に不慣れかもしれない。何が標準で、何が固有か、何処が外部調達可能で、何処を内製化すべきか。現代化の対象を特定することは、プロジェクトのスコープを定義すると同時に、経営戦略の優先課題に、基幹システムのケーパビリティから優先順位をつけることにつながる。

図 1:保険会社のシステムランドスケープ

legacymodernization_4

(出典:セレント)

レガシーを再生産をしないモダナイゼーション

現代化プロジェクトの最大のリスクは、レガシーの再生産である。セレントは、このことはシステムの安定稼働やビジネスケースの実現以上に、重要と考える。出来上がった基幹システムがレガシーの再現であってはならない。そのために、以下の3点を提言する。

  1. 自動化とその複雑系への適用:
    最初の、そして最後のターゲットは、プロセスとサービスの自動化であろう。保険事務処理のストレート・スルー・プロセッシング(Straight Through Processing:STP)と、システムのみならず、事務及びコミュニケーション・プロセスの高運用性の実現の鍵を握るのは、事業プロセスの自動化とその複雑系(輻輳し、例外処理の多いプロセス)への適用である。
  2. コアスタンダードの確立と、ローカルバリエーションの許容:
    業務の敏捷性確保と、ITコスト削減の両立は、より下層のレイヤでの、再利用性と標準化が鍵を握る。
    プレゼンテーション、ビジネスロジック、データの3階層の内、上位2階層に共有化されるべきデータレイヤの再利用性と標準化は、その困難性故に、今回のサーベイにおいても「データモデルの硬直性」としてIT環境の課題の筆頭に挙がった。しかし、この部分に取り組まずして、レガシーの再生産からは脱出出来ない。
  3. ソーシングモデルの見直し:
    モダナイゼーションプランは、ソーシングモデルの見直しを含むべきである。それは設計フェーズから始まり、構築フェーズで評価され、その実現可能性が十分に検証されるべきである。グローバルな保険ITサービス企業のオファーは基幹システムの構築、運用、保守全てに広がり、選択肢は多い。既存アプリケーションの保守、テストに関するCenter of Excellence(CoE)、データ移行など、活用範囲も拡大している。

図 2:モダナイゼーションのターゲット: ソーシングモデルの見直し

legacymodernization_4-2

(出典:セレント)

最後に

こうした現代化の施策とその実行は、金融機関の事業戦略そのものを大きく転換する。つまり、システムの現代化は、ビジネスの現代化を加速する。セレントは、現代化の目指すべき方向性として、一つの金融機関が特定の顧客を囲い込む戦略から脱却し、以下のような新たなビジネスモデルへの転換を提言する。

  • 先端をゆくデジタル顧客とのコミュニティーの形成
  • バリューチェーン全般でのエコシステムの構築
  • 再利用と深化の出来るテクノロジーの採用
  • テクノロジーのサービス化、ホワイトラベル化、そして収益モデル化

セレントは、レガシーの現代化とは「ビジネスの現代化」であり、「デジタルとイノベーションへの布石」と信じる。

セレントレポート:

日本の保険業界におけるレガシー・モダナイゼーション パート1:調査結果分析と現状把握

日本の保険業界におけるレガシー・モダナイゼーション パート2:保険業界への提言

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Insight details

Content Type
Blogs
Location
Asia-Pacific