レガシー・モダナイゼーション(その1):日本サーベイの結果から

Celent will help qualify your requirements and introduce you to the vendor
Spotted a missing vendor? Use this form to alert a vendor to the Celent service
Create a vendor selection project & run comparison reports
Register to access this feature
Click to express your interest in this report
Indication of coverage against your requirements
Vendor requires PRO subscription to activate this feature
Requires research subscription, contact Celent for more info
17 September 2015
Eiichiro Yanagawa

本稿では日本の金融業界における、レガシー・モダナイゼーションの現状と今後の方向性を考察する。

第1回では2015年春に実施した、レガシー・モダナイゼーション・サーベイ2015の結果から日本のレガシー現代化の現状を明らかにする。第2回では、幾度となく現代化の荒波を経験し、進化し続ける自動車産業の歴史に知見を求める。第3回以降、目線を保険業界に特化し、保険会社にとって現代化の意味するところを述べ、最終回では、レガシーを再生産しないモダナイゼーションを提言する。

これまで同様、本稿の考察と示唆は、セレントの文責によるものであるが、そこには、これまでの世界各地における、金融業界プロフェッショナルに対するサーベイ調査の結果、ラウンドテーブルやカンファレンスにおけるイノベーターやソートリーダーとの議論が多数反映されている。本稿のインサイトが、日本の金融機関におけるレガシー・モダナイゼーションとその先のイノベーションを推進するための触媒となることを切望する。

定義

セレントはこれまで、グローバルな金融業界におけるレガシーシステムの現代化について定期的なサーベイを実施し、多くのレポートを刊行してきた。本稿においても、これまで同様に以下の定義を踏襲する。

  • レガシー・モダナイゼーション: レガシーシステムの現代化
  • レガシーシステム: 長年にわたって開発された、様々な機能を備えるが、新たな機能を追加することが難しいシステム
  • モダンなシステム: 高性能かつ先進的な機能があらかじめ実装されており、機能が追加しやすく、コードとビジネスルールを切り離せるシステム

サーベイ参加者の概要

  • 事業領域:銀行、保険、証券、資産運用の全金融セクターにほぼ均等に分布した。
  • 事業規模:収益規模(銀行は経常収益、保険会社は収入保険料、証券会社は営業収益)で、5,000億円以上の最大手機関が39%、1,000億円から5,000億円未満の準大手機関が25%、250億円から1,000億円未満の中堅機関が18%と続いた。
  • 営業エリア:日本を含むアジアが回答者の9割近くを占めた。北米、西欧に40%、東欧、中東、南米にそれぞれ20%と、グローバル展開を実施している。
  • 役割分掌:ITサイドが49%、ビジネスサイドが33%、ITとビジネスの兼務が18%であった。
  • 役職:中間管理職が39%、上級管理から経営幹部が35%、実務担当者が26%であった。

サーベイ結果と得られた知見

1.日本の金融機関における、レガシーシステムの現代化はどの段階にあるか?

  • 現代化の検討は本格化し、既に実施ステージにある。
  • 置換戦略は、①新システムへの置換、②新コードで書き換え、プラットフォーム置換が置換理由は、①リスク許容度、②ITスキルや能力との合致、③コスト、が主流。
  • 置換プロジェクトの進捗は評価から実施段階へ入るも、新たな解決策(SaaS、BPO)の検討は十分とは言えない。
  • 最大の課題は自社に最適なプログラムの選定にある。ベンダーサポートへの期待は、①戦略アドバイス、②新旧システムノウハウ、③実績、であった。

2.レガシー・モダナイゼーションのプロセスにおける、ビジネスケースの検討状況は?

  • 自社のIT環境について、新商品、顧客サービス対応は、処理コスト、規制対応を上回る課題と認識される。
  • 現代化の効果は、業務の敏捷性、ITコストの削減に見出されているが、業務コストの最適化、収益、機会の拡大や新市場への参入にそのメリットを見出せていない。
  • ビジネスケースはプロジェクトの進捗管理ツールに止まり、ライブドキュメントとして機能していない。
  • 大半のコストITプロジェクトに配賦され、特に、上流工程(レガシー分析、要件定義)のコスト配分がITに偏在している。現代化のコスト分析とその評価は時期尚早と言える。

3.新たなテクノロジーの採用検討と現代化への影響は?

  • テクノロジーの課題は①システム統合、②アプリの柔軟性欠如、データモデルの硬直性、③ITの重複と統合の困難性 にある。
  • データ変換と移行に関する考慮は未だ検討の段階に無い。
  • IT部門の能力に関する信頼は、高い/低いの両極端に分かれている。
  • 現代化の進展による、ビジネス部門、IT部門の役割変化は、未だ責任分担のを変化させるには至っていない。

以上の調査結果より、日本の金融業界における基幹系システム現代化への取り組みは「検討段階から実施ステージに入り、今、正に必要なものはレガシー・モダナイゼーション方法論である」との知見を得た。

一方、日本の金融業界におけるレガシー・モダナイゼーションの現状は残念ながらダイナミズムに欠けるとの印象も持った。すなわち、

  • レガシー・モダナイゼーション、つまり基幹システムの現代化がその産業の隆盛に結びつくとの信念は薄い。むしろ、「新結合」のもたらす過去の商品・サービスを前提とした既存のプロセスを変え、部門や機能の在り方を変える「破壊性」のリスクやコストを危惧する。
  • 基幹システムの現代化は、業務プロセスのSTP化、自働化、セルフサービス化を促すが、同時に、顧客のデジタル行動がそうした基幹システムの現代化を促すとの認識は薄い。
  • 企業内の「アントレプレナー」として、システム部門、ビジネス部門のミッションやオーナーシップを越え、現代化プロジェクトを牽引するイニシアチブは不十分である。

本稿の考察は、この現状認識から出発する。

図 1:SaaSの基幹システムへの導入

legacymodernization_1

(出典:セレント、日本の金融機関におけるレガシー・モダナイゼーション・サーベイ2015)

セレントレポート:

日本の金融業界におけるレガシー・モダナイゼーション パート1:調査結果分析と現状把握

Insight details

Content Type
Blogs
Location
Asia-Pacific