企業と銀行間の接続:トランザクションバンキング向けのエンベデッド・ファイナンス
Abstract
2018年11月、セレントは無人の自動化された企業向けデジタルチャネルに関する最初のレポート「 企業/銀行間のインテグレーションチャネル:ハイブリッド・アプローチの必要性」を発行した。この2018年のレポートでは、企業向けデジタルチャネルミックスの重要な要素であるホスト間のファイルベースの接続に焦点を当てた。これは、複数の銀行と取引先企業の財務部門をまたぐ大規模で複雑な情報の流れを安全、確実、かつ効率的に処理する役割を担っているためである。
その後、2022年にセレントは再び調査を行い、企業向けのデジタルプラットフォームと配信チャネルは依然として銀行の投資最優先事項であることが分かった。しかし、サイロ化したスタンドアローンソリューションを提供するだけでは十分とは言えない。銀行は、オムニチャネルのデジタル顧客エクスペリエンスを提供することが不可欠である。すなわち、有人・無人にかかわらず顧客とのすべてのインタラクションポイントにおいて、カスタマイズされながらも一貫性のある顧客エクスペリエンスを提供する必要がある。
銀行と銀行法人顧客はいずれも、企業/銀行間の接続の分野が複雑化しているという問題に直面している。こうした中、クロスボーダー決済の増加、メッセージフォーマットの変更、ファイルサイズの拡大、現在も続く統合上の課題、デジタル化の需要の高まりを受け、無人のデジタルチャネルへの注目(および投資)が拡大している。
銀行は、特に第三者のスペシャリストを活用することで、企業/銀行間の接続と統合の分野が複雑化して課題が増えているという状況を克服するうえで有利な立場にある。複雑さを解消(または軽減)するうえで最終的な目標となるのは、完全に自動化されたストレートスループロセッシング(STP)を導入し、ファイルチャネルを使用するかAPI経由かにかかわらず、ERP、TMS、および会計ソフトウェア内でバンキングデータと決済の処理を行うことである。セレントのエンベデッド・ファイナンスのフレームワークでは、このSTPはテクノロジー主導のエンベデッド・ファイナンスに分類されており、「テクノロジー主導のエンベデッド・ファイナンス」は、銀行の標準的な商品をパートナー企業のデジタルエクスペリエンスに容易に統合できるようにすることと定義されている。
残念ながら、レガシーシステム、サイロ化されたテクノロジーチーム、現在も続く統合上の課題、細分化されている業務サポートは、企業/銀行間のシームレスな接続によるエンベデッド・ファイナンスを実現するうえで、銀行と銀行法人顧客の両方にとって引き続き障害となっている。セレントは銀行に対し、ホスト間、Swift、内部ネットワーク、APIといった無人の接続チャネルについて綿密に調査し、益々複雑化する分野において顧客の期待に確実に応える(できれば、期待を上回る)ことを推奨している。また、銀行がこの難題に挑む準備を整えるためには、スペシャリストであるプロバイダーの専門知識に頼ることも有効な手段である