昨今、生成AIを取り入れていない銀行を探すのは難しい。短期間で目にみえる価値を得られることから、社内のワークフローにおける労働力の負担を減らす目的の活用が多い一方で、顧客向けのサービスにおいて生成AIを使うことはまだ潜在的なリスクがあると考えられている。ブラジル銀行による「ARI」の立ち上げは、その観点において評価されるべき点が2点ある。まず、これは業界でも前例の少ない顧客向けの生成AIプロジェクトであること、そして、中小企業の顧客の抱える問題に対応するとして、より良い会社運営のための有益なアドバイスを提供していることである。
ブラジル銀行は、事業主の多くが財務管理やマーケティング、顧客獲得などの重要な分野におけるスキルギャップに悩んでいることに気づいた。しかし、この顧客グループ対象のリレーションシップ・マネジメントのサポートが不足していた。そこで、近年進化を続けている生成AI技術を活用したデジタルチャネルを通じたより関連性のある的を絞った提案ができるのではないかと考えて、このイニシアチブを開始した。結果として、事業主は自社の運営・管理を改善できるようになり、銀行は競合他社との差別化を図ることができた。
このイニシアチブの重要性は、ブラジル銀行が生成AIを活用して生み出した価値ではあるものの、それ以上に「人間が意思決定に関与することの大切さ」を浮き彫りにしたことである。どんなテクノロジーにも言えることだが、LLM(大規模言語)モデルの出力データの質は入力されたデータの質を超えることはない。つまり、AIのトレーニングにおける入力データの質と、プロンプト設計にかける時間が重要と言うことである。顧客対応サービスに生成AIの導入を検討している金融機関がここから学ぶべき点は、生成AIの導入における人間の役割である。つまり、人間が、声のトーンや話の内容の関連性、セキュリティやコンプライアンス対応などを含めたコミュニケーション全般にわたる適切な基準を満たしているかどうかの判断をすべきなのである。
このイニシアチブに関する[ハイライト動画(https://vimeo.com/1091791655/7354ad3c83)と概要は一般公開されている。セレント会員はログインすることでレポート全文にアクセスできる。
