レガシー・モダナイゼーション(その2):自動車産業における現代化の歴史が金融業界に示唆するもの

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23 September 2015
Eiichiro Yanagawa

本稿では日本の金融業界における、レガシー・モダナイゼーションの現状と今後の方向性を考察する。

第1回では2015年春に実施した、レガシー・モダナイゼーション・サーベイ2015の結果から、日本のレガシー現代化の現状を明らかにした。第2回の本稿では、幾度となく現代化の荒波を経験し、進化し続ける自動車産業の歴史に知見を求める。

自動車産業革命とモダナイゼーション

自動車は20世紀前半に米国で隆盛し、後半に日本で成熟した、前世期最大のイノベーションである。自動車産業は2度の大きな産業革命を経験し、今世紀に入ってもその「新陳代謝」を続けている。多くの先行研究は、自動車産業における技術とイノベーション、そしてモダナイゼーションの進化を辿っている。セレントは、自動車産業におけるモダナイゼーションの進化の要点を以下のように捉え、これらが日本の金融業界に何を示唆するかを考察する。

  1. 生産方式の進化は、供給サイドの生産性、品質、効率化の向上と同時に、需要サイドの新たな消費者、消費形態、ライフスタイルを創出した。
  2. 製品・サービスの黎明期には、「単一モデル」から「フルライン」へとニーズが一気に拡大し、供給サイドは「販売戦略」のみならず「コスト構造」を大変革させることが要求された。
  3. 生産とマーケティングを計画的に統制するためには、販売チャネルの変革だけでは足らず、柔軟な生産ライン(基幹システム)が必要であった。

日本の自動車産業の貢献

テクノロジーはもとより、ソーシャルな存在である。つまり、技術が「新結合」の担い手となり、「創造的破壊」を通じて産業の「新陳代謝」を促すためには、いつも時代背景があり、技術は常に社会的な存在であった。

英国の産業革命では、16世紀から続く市場機能を利用した「単一機能特化企業」(生産、販売、購買などの単一企業活動機能に特化した企業)が活躍した。米国の第1次自動車産業革命では、広大なフロンティアと未整備な新市場を背景に、全ての企業活動機能を内部に抱え込んだ「ビックビジネス型企業」が大量生産、大量販売をリードした。

日本の場合はどうか?トヨタ生産方式は、第3の組織形態を前提とした。英国を市場型、米国を内部組織型と呼ぶならば、日本では「系列システム 」の存在を前提とし、市場の持つ効率性と組織の持つ安定性を兼ね備えた「中間組織」型を形成した。そして、この組織形態は、自動車のみならず、家電、機械工業など日本の製造業に広く普及し、80年台を通じてグローバル市場を席巻した。やがて、日本の自動車産業は、この「ジャスト・イン・タイム」や「ケイレツ」を携え、グローバル企業へと変貌を遂げた。

自動車産業革命における「新陳代謝」

20世紀の米国、そして日本の自動車産業革命における「新陳代謝」の共通項を、セレントは以下のようにまとめる。

  1. 発明やその事業化は、その産業を取り巻く供給者の新たな価値連鎖のみならず、新たな需要者も創出する。多くの場合、「新陳代謝」は製品価格の低下、価値連鎖の短縮、新たな需要者セグメントを創出する。
  2. 「新陳代謝」は、自らの価値の源泉、コスト構造の前提を破壊し、新たな価値連鎖や顧客価値の誘因となる。また逆に、新たな顧客価値は、既存のコスト構造を抜本的に破壊する「新陳代謝」を誘導する。
  3. 発明を実用化し、事業化する「アントレプレナー」は、「頭の中に鳥を飼う」(ヘンリー・フォードは当時そう言われた)というほどに、その時代の人からは奇異に映る。見えない大陸を探索し、未消費な消費者に新たな消費を促す。同時に、自身を社会的な存在と自覚し、自社の技術、製品、サービスを、その産業の生み出す社会的な文脈の中で評価する。

自動車産業の現代化の歴史が日本の金融業界に示唆するもの

これらが日本の金融業界に示唆するものは何だろうか?セレントは以下のように答える。

  1. レガシーな基幹システムの現代化は、金融機関サイドの商品・サービスを供給する生産性、品質、効率化の向上と同時に、金融商品・サービスを利用する需要サイドの新たな消費者、消費形態、ライフスタイルを創出する。
  2. 新しい金融商品・サービスの黎明期には、需要サイドの成長とニーズは「単一チャネル」から「オムニチャネル」へ加速し、不可能と思われるほどの「コスト構造」の改革を、供給サイドである金融機関に要求する。
  3. 金融商品・サービスの提供とマーケティング活動の連携戦略は、販売チャネルの変革だけでは実現できず、基幹システムの現代化がその前提である。

図 1:自動車産業の進化

legacymodernization_2

(出典:ウィキペディア、フォード、日産)

セレントレポート:
日本の金融業界におけるレガシー・モダナイゼーション パート2:自動車産業における現代化の歴史が金融業界に示唆するもの

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Insight details

Content Type
Blogs
Location
Asia-Pacific