製販分離:金融サービス業のモジュール化

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26 December 2014
Eiichiro Yanagawa

ダーウィンの進化論を引用するまでもなく、変化したものだけが生き残れる。変化への対応力は、変化を回避するのではなく、変化を活用することから養われるはずだ。そして、その変化は正に、イノベーションの機会である。本稿では、金融機関と金融機関向けのITサービスベンダーに対する戦略示唆として、金融サービス業のモジュール化について論述する。

セレントはかねてより、金融サービス業における、製販分離とモジュール化の有効性を主張してきた。製販分離とは、すなわち、金融商品の製造と販売の分離を指し、そこでは、「モジュール化」「アンバンドリング」「パッケージャ」などの技術経営の適用と、それらの手法を駆使した、業務機能、業務プロセス、IT システムの疎結合化、インターフェースと手順の標準化、その水平展開による国際分業などの有効性などが提唱される。金融商品において、生命保険と投資信託の2つは、最も製販分離が進んだ商品である。そして、これらは銀行チャネルで販売される2大商品である。

投資信託のビジネスモデル
投資信託のビジネスモデルは、①投資先の選択(ポートフォリオの構築)、②出来上がった投信の販売、の2つのプロセスに分かれ、①は商品(ポートフォリオ)設計及び製造(生産)にあたり、②は投資会社の株式(投資信託の受益証券)のセールスであり、販売業者が顧客取引報告などの事務処理を行う。

証券会社と投信会社のクローズド・モデルの時代、1960 年代までは、投信会社から外部の証券会社(フルサービス・ブローカー)への委託販売が主流であった。固定的な手数料体系(投信販売手数料(顧客から証券会社へ支払われる)と株式売買手数料(投信会社会社から証券会社へ支払われる))と、投信会社と証券会社の間の互恵的な委託販売関係から、長らくクローズドな関係が構築されてきた。その後、販売形態の多様化が進展した。

1970 年代以降、ノーロード・ファンド(販売手数料ゼロ)の直接販売事業者が出現した。その背景には、①株式売買手数料自由化、②株式市場の需要不振、③アドバイス無しのディスカウントブローカの台頭があるが、この時代は、販売の多様化のみで、設計、製造、販売を兼業するクローズド・モデルに変化は無かった。

最後に、投信スーパーマーケットによる革新が起きた。チャールズ・シュワブが1992 年に販売を開始したシュワブ・ワンソースでは、リストアップされた複数の投信を購入する限り、顧客には全く手数料がかからず、代わりに、シュワブは投信会社から、預かり資産残高に応じた年間の管理手数料を徴収した。投信をスーパー店頭の棚に載せ、売れた分だけの手数料を取る方式であった。投信会社と証券会社のインターフェースがオープン化され、製造と販売がモジュラー化し、分離した。

生命保険のビジネスモデル
日本の生命保険会社の場合、自社の販売力をその競争力の源泉とした時代が長く、投資信託のビジネスモデルの変遷が、そのままあてはまるとは考え難いかもしれない。しかし、日本での事業経験の長い、グローバル保険会社の中には、欧米での製販分離型の保険ビジネスモデルを背景に、生命保険、損害保険の業態毎の子会社の統合、代理店間接販売とネット直接販売の統合と分離、バックオフィスの広域地域での共有(シェアードサービス化)などを通じて、本格的なアセンブラー型モデル(製造業における、オープンアーキテクチャを前提とした部品メーカーの提供するモジュールを組み立て、完成品を提供する事業形態)への移行に取り組むケースも散見される。また、その逆に、こうしたアセンブラーに対して、積極的に部品である金融商品の提供に特化する保険会社も増加しよう。

  • 銀行窓販
    既に、銀行窓販は、保険会社にとって、今後とも期待される有力販売チャネルであることに相違ない。保険会社の保険料等収入の増加は、銀行チャネルにおける一時払い終身保険などの貯蓄性商品の伸びに大きく依存し、特に、生命保険ビジネスにおいてその重要性は高い。
    一方、銀行から見ても、保険商品の窓口販売はオフバランスでのクロスセリングによる、新たなフィービジネスとして魅力的である。
    銀行窓販は保険会社にとって、保険キャリア(保険商品の開発・運用会社)と保険エージェント若しくはプロデューサー(保険商品の販売会社)が、ほぼ対等な立場でパートナーシップを組む、新たな形態のビジネスとも言える。今後多様化した販売チャネルのもとでの、新たなパートナーシップの発展が期待される。
  • 保険ショップ
    また、来店型保険ショップは、新たな代理店の業態として、急激な成長を遂げている。特に、その店舗数の拡大は、2009年には各社合計で200店舗程度であったが、2013年には1,000店舗に迫り、年平均成長率で30%を上回る成長である。大型の流通施設や繁華街の路面店など、他の流通事業者、銀行をはじめとした金融機関に伍して、来店客確保のため店舗数を競っている。
    乗合代理店では、複数の保険会社と代理店契約をし、「まず保険商品ありき」から、「ライフプラン」と「乗り換え需要」への対応を重視し、生命保険、損害保険のワンストップ提案を実現している。従来の保険商品の「販売」から、保険会社各社の提供する「保障」サービスの提案へとシフトし、公平中立なコンサルティングを売り物にする。
    日本の乗合代理店(複数の保険会社と取引のある代理店)は、現在、来店型、訪問型、ネット型の3類型が存在する。現状、乗合代理店全体での販売シェアは5%程度とみられるが、銀行窓販をはじめ、様々な販売形態で展開される乗合代理店のシェアは今後とも上昇が見込まれ、セレントは今後3年間の年平均成長率で30%以上の成長を予測する。

日本の保険業界における、製販分離:金融サービス業のモジュール化の動向と取り組みについては、下記のセレントレポートを推奨する。

  • 日本の保険業界の動向パート2:新時代の販売チャネルにおける課題と対処策
    http://www.celent.com/ja/reports/32419
  • 日本における乗合保険代理店:勧められるから比較する時代へ
    http://www.celent.com/ja/%252Fnode/32233

Insight details

Content Type
Blogs
Location
Asia-Pacific